いにしえ峠道

既に記憶からも遠くなり忘れ去られた峠越えの山道を歩いてます

【番外編】稚児山白山遠望

気持ちはあるのだが、なかなか峠探訪が進まない。
今回はその足慣らしとして軽めの登山を試みた。

登山というのもおこがましいくらいの山なのだが、たまたまGooglearthで3D地図を見ていたら、近くから白山展望が良さそうな山を見つけたので軽い気持ちで歩いてみた。

比較的白山に近いロケーションにあるこの地だが、近いがゆえに、白山を遠望するのがなかなか難しい。手前にある1000~1500mの山に遮られて山容が見えないのだ。

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Googlearthで見るとこんな風に見えるので、朝はまったくその気はなかったのだが、お昼を食べてから速攻で向かった。

この山は地元でもなじみが深い、稚児山という低山(618.8m)だ。
郡上八幡の入り口にあたる長良川沿いにある山で、上流から眺めると秀麗な独立峰がそびえ、その山頂には電波塔のような鉄塔が立っていてとても目立つ。
地元の小学生にはハイキング登山として利用されているようだ。

国土地理院地図で見ると、麓の西安久田から尾根を直登する登山路が記載されている。
そこから山頂まで200mの登山ということで、冬でなまった体にはちょうどいいトレーニングというところだろうか。

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登山口は集落への分かれ道入り口近くにありすぐに見つけられた。
登山道は思ったよりも歩きやすく、古道後のように道がえぐれ、古来から登拝路として利用されていたような雰囲気があったが、山頂までの間には何ら痕跡を残すような遺物は残されていなかった。

道はすぐに尾根道となり、山頂近くからからは傾斜がきつくなってきたがわずかな距離であった。(尾根の途中には新しそうな熊のフンも発見しちょっとびびった)
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山頂には大きな電波塔があり、比較的広く周囲が整備されていた。
三角点はあるものの、山頂名を示すものはどこにもなかった。

しかし、山頂からは周辺の広葉樹が邪魔になり、白山はおろか、間近に見えるはずの郡上八幡の街並みさえも見えなかった。
どこか見えるところはないかと、鉄塔周囲を歩いてみたら、裏側(南東)のそばに石碑を見つけた。

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表に白山神社と書かれている50cm位の石碑には、表に白山神社と彫られており、裏側には個人名と奉納の期日の銘があった。
その周囲には、無数の小判型の長細い自然石が置かれていた。

やはりここは、古来からの白山遥拝地であったようだ。
登拝者が参拝の記念に奉納していたものの痕跡である。
しかし、白山神社を示すような祠のような跡はどこにもなく、もしかしたら、古い時代に山里の神社に合祀されてしまったのかもしれない。
稚児山(ちごさん)という名前からして、何らかの信仰の歴史があったのだろう。

しかし、白山が望めなければ遥拝地とは言えないので、何とか見えないものかと、枝の隙間を探したら、植樹された針葉樹と雑木林の境目から何とか遥拝できる場所を見つけることができた。

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実は、この山の南に谷川(千虎川)を挟んである山の麓には宝伝の滝(千虎滝とも)という小さな滝があり、そこは江戸時代の修行僧である円空法師が白山神を感得した記念として仏像を収められた場所でもある。


やはりここは古来からの白山遥拝地であったのだ。
白山信仰を広めた泰澄大師や円空さんが、ここから白山を遠望したのかと思うとありがたみもひとしおだ。