いにしえ峠道

既に記憶からも遠くなり忘れ去られた峠越えの山道を歩いてます

旧白川街道高鷲からひるがのへの山越え

旧白川街道は郡上白鳥から砺波に抜ける98kmの山道である。

その中でも、ルートが明らかになっていない区間として、高鷲からひるがのの四本杭の区間がある。
四本杭とは、美濃と飛騨の国境を示した場所として、近世の逸話が明らかとなっているが、現在その場所は未指定となっている。

今回調査したのは、高鷲からひるがのの四本杭に抜けていた旧白川街道のルートである。

ひるがの(および上野地区)は戦後に入植開拓された地域であり、当初は泥湿地の農作物に不向きな土壌であり、開拓者達は大変な苦労をして土壌改良し、酪農から高原野菜の農業を始めた地域です。

長良川源流(高鷲叺谷)から峠を越えてひるがのに抜ける道路は、御母衣ダムの電源開発計画により、その資材運搬を容易にするために整備された道路(通称100万円道路)であり、それ以前は車両が通るのは困難な道路であった。

さらにさかのぼる近代の始めまでの白川街道は、高鷲から北東に尾根筋を越えて上野に出るルートであったと記述されていますが、四本杭までの道筋ははっきり残されていませんでした。

上野から四本杭を抜けて飛騨野々俣に向うルートは戦後の農地開拓により跡形もなくなり、辿ることはできませんが、高鷲から上野に出るルートは山道であり、きっと痕跡が残っているだろうと以前から資料など探索をしていました。

長良川が支流の鷲見川と分かれる辺りを、その間にある山に登り尾根伝いに上野にでるコースであることは過去の資料から明らかになっていましたが、具体的なルートがどこにあるのかは長い間の謎でした。

今回調査踏査を試みた最大の理由は、知人に教えられた航空レーザー測量地図の存在が大です。(ひなたGIS)
たまたま岐阜県のレーザー測量図を見ていたら、山に残る山道の跡らしきものが気になりました。場所的にもこれは旧白川街道の山道でないかとひらめいたのです。

今まで想定していた場所よりも長良川沿いに少し入った谷から続く山肌をつづらおりに登り、そこから北に向かい尾根筋を上野に出る道筋が山肌に残されていました。

高鷲集落からひるがのに向かう国道(156号)から、谷筋を下って小さな橋がかかっていることを地図で確かめて、その近くに車を止め、橋に向かう道(道は地元の建設業事業者の渡場裏からつづいていました)を下りました。

この橋を一般の自動車が入ってくることはほぼないようですが、造林施業の関係で作業車が入るために作られたようです。

橋を渡り、地図に残る道跡を探して山肌を登り始めました。
道跡はすぐに発見することができました。
レーザー測量された道跡らしい場所を探しているのだから見つかるのは当然ですが、こんなにもはっきりした道跡が残っていたとは驚きでした。
レーザーの測量精度は1メートル前後の高低を見事に反映して地図に表示していることがよくわかりました。

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写真左下から右上方向に向う山に道跡が残る

これまで多くの古道(峠道)調査を行なってきましたが、これまでは過去の地域資料や古地図に残る道跡を頼りに現地調査をしていたので、そもそもどこが入口なのか、どこを通っていたのかほとんどあてずっぽうで歩き回り、運よく道跡を見つけられたものもあるけど、多くはたぶんこのあたりと推定するにとどまる場所も多くありました。

既に使われなくなって50年(100年以上もある)は過ぎた山道の旧道跡はそれほど荒れその痕跡を失いつつあります。

しかし、今回利用したレーザー地図の痕跡からたどる道筋は、確実に現地に残る痕跡が前提となっているので、これまでの資料頼りの調査とは比較にならないくらいスムーズで確実です。

今回、地図上では不明確な痕跡も現地に入れば結構な道跡が残っており、上野台地に出るまでの山道をほぼ確認することができました。
これもやはり、旧街道の痕跡ということで、いかに多くの人々がこの道を通ったのかを証明していると思います。

山道に何か遺跡的なものが残っていないか注意して歩きましたが、人工的な遺跡は見当たらず、一部山道の補強のために積み上げられたような石垣跡らしきものがありました。

上野台地の先端である平地に抜けるまでは、約1時間半の道のりです。そこから次の街である飛騨の野々俣まで約1時間で、高鷲からは徒歩3時間程度の道行きであったのでしょう。

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